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Interview:Alba Yruela

Alba Yruela
Alba Yruela

_この度は、質問に答えていただきありがとうございます。では早速ですが、あなたについての自己紹介をお願いします。


アルバ・ユルエラです。エンポルダ地方のラ・ビスバル・デンポルダで生まれ、現在はバルセロナを拠点に写真家として活動しています。自然や人の感情を写し取ることに深い愛情を持っていて、すべてのイメージの中に、親密さや感情的なつながりを見出そうとしています。


_あなたが写真家を志したキッカケをお聞きしたいです。そもそも写真との出会いはいつ頃だったのでしょうか?そして、どのように写真家になろうと志したのでしょうか?


最初は本当に、ただの遊びでした。地元で友人たちを撮ることから始まったんです。同時にFlickrも使っていて、あのプラットフォームで育った人なら、あの独特の感覚は分かると思います。Flickrは、アマチュア写真家の世代全体が、初めて自分たちの写真を共有し、お互いの作品を発見し、共通の関心を通してつながることができた場所でした。そこで初めて、心を動かされる写真に出会い、もっと深く写真を撮りたいと思うようになりました。

18歳のときにバルセロナへ移り、勉強を始めたのですが、そこではまったく新しくて広大な世界が待っていました。そこでラファ・カステルスと出会い、次第に多くの関心を共有するようになり、一緒に成長し、写真について学んでいきました。

私は「写真家になろう」と意識的に決めたわけではありません。むしろ、それは本能のようなものでした。写真を撮ることに、何よりも大きな喜びを感じていたので、時間を無駄にしたくなかったんです。グラフィックデザインの勉強をやめ、バーで働きながら、写真で生活できるだけの収入を得られるようになるまで続けました。そしてフリーランスになりました。すべてはとても自然な流れで起こり、私はそのプロセスに対して、とても辛抱強く向き合ってきたと思います。


_あなたの作品集を見ていると、日常の風景、友人、恋人、セルフポートレートと、それらの中に必ず花や木などの自然が入っています。これらの自然はあなたとどう関係していると思いますか?


これらすべての被写体は、私の感情を表しているものです。どれもが私自身の人生を形づくる要素であり、ひとつひとつが私の注意を引き、立ち止まって、より注意深く見ることへと導いてくれます。私はそれらを、自分の内側にある感情を映し出す鏡のような存在だと感じています。そこでは、目に見えなかった感情が姿を現すのです。


Cherry Blossom, Don’t Cryからの1枚
Cherry Blossom, Don’t Cryからの1枚

_また、これらの自然は、あなたの出身地であるエンポルダが関係していると思いますか?エンポルダはとても自然豊かな場所だと聞きました。


はい、間違いなく、エンポルダで育ったことが、この土地への深い愛情を形づくったと思います。子どもの頃は、川へ行ったり、野原を歩いたりと、屋外で過ごす時間がとても多かった記憶があります。10代になると、次第にその環境が窮屈に感じられるようになり、外へ出たいという気持ちが強くなりました。でも、バルセロナで暮らし始めてから初めて、あの風景と自分とのあいだにある、切れることのないつながりに気づきました。

私の作品の多くは、エンポルダで撮影されています。そこは「家」のような場所ですが、同時に、そこを歩くたびに、いつも新しい何かを発見させてくれる風景でもあります。


Diaris 2009-2019から
Diaris 2009-2019から

_あなたはこれまでにいくつもの作品集を発表してきています。「Cherry Blossom, Don’t Cry」をリリースする際にSNSで「本をつくるとき、そこにはいつも、どうしても形にしたくなる「特別な何か」があります…(I feel every book I make holds something special that begs to be created…) 」とあなたは綴っていました。もう少しこのことについて具体的にお聞きしたいです。その「特別な何か」を感じたときに制作されるのでしょうか?もしくは、制作している中で「特別な何か」が宿ることを感じるのでしょうか?


私はたいてい、あらかじめプロジェクトを計画することはありません。制作のプロセスはとても直感的で、仕事を続けていくなかで、自然とアイデアが立ち上がってきます。まずは漠然とした方向性を感じ取り、時間をかけて、読んだり考えたりしながら、それを内省していきます。

私は日記を綴るように、常に写真を撮り続けています。プロジェクトのテーマが見えてきたとき、過去の写真を振り返り、そのテーマを最もよく表している写真を少しずつ集めていきます。その過程のなかで、私は私自身を理解していくのです。というのも、昔の写真を見返すと、その瞬間の感情が、ほとんどの場合によみがえってくるからです。

『Cherry Blossom, Don’t Cry』も、まさにそのようにして始まりました。帰国してしばらく経ってからあの旅の写真を見返したとき、東京への旅が、私にとって非常に個人的なものだったと気づきました。そこに写る写真すべてに、自分自身の存在を強く感じましたし、それらは当時の私の感情の状態をはっきりと映し出していました。


Cherry Blossom, Don’t Cryからの1枚
Cherry Blossom, Don’t Cryからの1枚

_あなたの前作「Diaris 2009 – 2019」のことについてお聞かせください。この作品集は10年という時間、そして464ページというボリュームがとても目を惹きます。「Diaris 2009 – 2019」以前に何冊か作品集を出されていますよね。なぜ、このタイミングで10年というカタチにしたのでしょうか?どういったプロセスからこの作品集は生まれたのでしょうか?


『Diaris 2009–2019』の構想を考え始めたのは2019年、私がロンドンに住んでいた頃でした。その頃、多くの人がInstagramを通して私の作品を知ってくれるようになった一方で、それ以前に私が何をしてきたのかは、あまり知られていないと感じていました。だからこそ、その膨大な仕事に、きちんとした文脈と「存在する場所」を与えたいと思ったのです。

このプロジェクトを始めたときから、非常に大きなアーカイブになることは分かっていました。10年分の時間と瞬間を、きちんと受け止められる本を作りたいと考えていました。私は好奇心と高揚感を持ちながら、ゆっくりとアーカイブに向き合い、特に強い感情的なつながりを感じる写真に注意深く目を向けていきました。

最初のセレクションの後、約1,000枚の写真をプリントし、スタジオの床に並べました。写真を物理的に見ることで、それまで気づかなかった新しい関係性が見えてきたのです。構造よりも感覚に導かれながら、直感的に写真を組み合わせていきました。最初は時系列で構成するつもりはなかったのですが、シークエンスが形を成していくなかで、この感情の旅路を伝えるには、年代順が最もふさわしいのだと気づきました。


Diaris2009-2019
Diaris2009-2019

_そして「Diaris 2009 – 2019」では、とても赤裸々に綴っている印象を受けました。あなたは、この作品集をどう捉えていますか?また、この作品集において、あなたが感じる「特別な何か」についてもお聞きしたいです。


『Diaris 2009–2019』は、私が私自身の人生へと立ち返るための本です。私は、物を残すことやアーカイブ、記憶というものに強く惹かれています。というのも、イメージがなければ、私自身の記憶はあまり確かなものではないと感じているからです。写真に収めたすべての瞬間は、時間が経っても思い出すことができるものになります。この本を作ることは、私の20代、そして2010年代を通して抱えていた感情の核を保存する行為だったように思います。

私はこの本を、ただ「自分にとって何が必要か」という内的な必然性に導かれるままに作りました。ページが少しずつ定まっていくなかで、静かにひとつのリズムが立ち上がり、見る人それぞれが、自分なりのつながりを見出せる余白が生まれたのだと思います。


_最新作「Cherry Blossom, Don’t Cry」についてお聞きしたいです。前作の「Diaris 2009 – 2019」、最新作の「Cherry Blossom, Don’t Cry」、その他の作品集を見ていても一貫してあなたの人柄を感じます。作品集にする際に、あなたが意識している共通する部分はあるのでしょうか?


私の個人的な作品はすべて、あまり考えすぎることなく続けている、ひとつの終わりのない日記のようなものから生まれています。私が撮っているのは、気づくと何度も立ち返ってしまう、小さな執着のようなものです。ときどき新しい好奇心が芽生え、それを追いかけることもありますが、決して無理に何かを生み出そうとすることはありません。

本を作る段階になると、写真を選んでいく過程を通して、私自身や、写真が私に与えてくれる感情へと意識が向いていきます。ただ美しいイメージであるだけでは足りず、そこには感情が宿っていること、そして写真同士がひとつの感情的な全体として響き合っていることが必要だと感じています。

最終的に、私のすべての本がどこかでつながっているように感じられるのは、それらが私の人生そのものから生まれているからだと思います。それぞれが、異なる視点から、ある時間、ある場所、ある感情の断片に焦点を当てているのです。


Cherry Blossom, Don’t Cry表紙の1枚
Cherry Blossom, Don’t Cry表紙の1枚

_「Cherry Blossom, Don’t Cry」では、2023年にあなたが訪れた東京でのことを題材にされてますよね。この本について、あなたはどう捉えていますか?前作の「Diaris 2009 – 2019」と比べた場合、ボリュームや撮影の期間だけでなく、それ以外にも異なる部分を感じています。この作品集であなたが表現したかったことや伝えたかったことなどをより詳しくお聞きできればと思います。


私自身も、この本はこれまでとは違うものだと感じています。その特異性は、2023年の東京での滞在中に撮影した写真だけに限定されている、という時間と場所の枠組みにあります。

私は個人的にとてもつらい時期を過ごしていて、心が弱っている状態で東京に来ました。また、自分の仕事とも切り離されてしまったように感じていました。その感覚が、この本の始まりを形づくっています。家から遠く離れたことで、自分が良い状態ではないことに気づき、何か行動しなければならないと感じました。時差ぼけの影響もあり、最初の数日はひどく混乱していました。

けれど日が経つにつれ、果てしなく歩くようになり、街そのものや、そこで見つけた小さなディテール、本や展覧会で出会ったイメージ、出会った人々、そして何よりも花たちが、少しずつ私を癒してくれました。

この本のタイトルは、潜在意識からのメッセージのようなものだったと感じています。私自身への静かなリマインダーのようなものです。本の中では、ひとつひとつの花が異なる意味を持ち、当時の私の状態を説明する役割を果たしています。そして最終的に、桜は私のなかで、静かな転換点を示す存在となりました。


本:Cherry Blossom Don't Cry
本:Cherry Blossom Don't Cry

_そして、今回制作したスペシャルエディション「Cherry Blossom, Don’t Cry. 桜花笑春風」では、写真を8枚に厳選しました。このエディションは、鑑賞者が自ら、掛軸の写真を組み替えることを可能にしています。あなたは、なぜこの8枚の写真を選んだのでしょうか?そして、このエディションについての率直な思いをお聞かせください。


この8枚は、ひとつのまとまりとして、この本全体を要約していると感じた写真です。物語のなかの重要な瞬間だと捉えています。表紙に使われている花の写真と、鏡に映るモノクロのセルフポートレートは、本の冒頭にあった悲しみや孤独、閉塞感を表しています。一方で、川面に映る白い花は内省の瞬間を示し、街灯に照らされてピンク色に染まる花や階段のイメージは、光へと向かう動きをほのめかしています。


Cherry Blossom, Don’t Cryからの1枚
Cherry Blossom, Don’t Cryからの1枚

オブジェとしても、このスペシャルエディションは私にとってとても意味のある存在です。鑑賞者が参加できる余白を持っているからです。写真を組み替えられることで、作品との関係はより親密で能動的なものになり、私たちの気分が移ろうように、シークエンスも自然に変化していきます。日本の伝統的な形式と向き合いながら、日本的なオブジェを制作できたことは、私にとってとても特別な経験でした。"Cherry Blossom, Don’t Cry"が日本でどのように受け取られたかについて、深い感謝の気持ちを抱いています。それは、写真に込めた感情が理解され、共有されたのだと確信させてくれました。


Special Edition :Cherry Blossom, Don’t Cry. 桜花笑春風
Special Edition :Cherry Blossom, Don’t Cry. 桜花笑春風

_ここまで質問に答えていただきありがとうございます。最後に、この記事を読んでいる方に向けてメッセージをお願いします。


これらの写真のなかに、読者の方それぞれが、自分自身の経験や感情と響き合うような、何か身近なものを見つけてくれたら嬉しいです。


_ありがとうございました。

Alba Yruela -Profile-

アルバ・ユルエラ(1989年生まれ、スペイン)は、エンポルダで育ち、自然への深い愛着を育んだ。身近な風景や人々を、親密で繊細でありながら、どこか率直な視点で写し取っている。彼女の制作はポートレート、静物、ファッション、映像など、多様なメディアに及ぶ。

これまでパリ、ロサンゼルス、ロンドン、バルセロナなど世界各地で作品を発表し、十数冊におよぶ写真集も刊行している。中でも代表作 Diaris 2009–2019 は、約10年にわたり撮影された500点以上の写真で構成され、内面世界をやわらかに映し出す美しく瞑想的な記録として高く評価されている。個人的な記憶と、形・色・光をめぐる探求とが織り重ねられた一冊である。

最新刊 Cherry Blossom, Don’t Cry(2025)では、日本滞在中に経験した心の変化を手がかりに、〈迷い〉から〈再生〉へと移りゆく感情の動きを、自然への変わらぬ眼差しを通して描き出す。満開の桜の下で、外界と内なる感性が響きあうように交わる、その繊細で詩的な瞬間が捉えられている。


 
 
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