Cherry Blossom, Don’t Cry. 桜花笑春風
スペイン・エンポルダ出身の写真家Alba Yruela(アルバ・ユルエラ)の新作エディションをCYROで発表します。12月11日(木)から始まるTOKYO ART BOOK FAIR 2025で先行発売し、12月13日より当オンラインショップでもご購入いただけます。
We’re excited to present a new edition by Alba Yruela, a photographer from Empordà, Spain. It will be launched in advance at TOKYO ART BOOK FAIR 2025 starting Thursday, December 11, and will be available on our online shop from December 13.


Introduction
自然との深い結びつきを基点に、アルバ・ユルエラはこれまで、親密さと率直さが織り重なる作品を生み出してきた。友人や恋人、日常の風景、時には孤独の気配を帯びたセルフポートレート——彼女は身のまわりの世界を、あるがままに写し取っている。その写真には、ためらいのないまっすぐな視線と、繊細さが共存している。
『Cherry Blossom, Don’t Cry. 桜花笑春風』は、ユルエラが2023年の日本滞在中に制作したシリーズを基にした特別版である。彼女は当時、人生を十分に楽しめていないと感じ、深い悲しみに沈んでいたという。そんな時期に、ふと出会ったのが優しく咲き誇る桜の花だった。彼女はその瞬間を自身の言葉でこう綴っている。
「桜の静かな美しさが、そっと私を励ましてくれたように思います。そして私は思い出したのです。自分のやるべきことを、もう一度やってみよう、と。──咲くこと。私も。」
本エディションに添えられた「桜花笑春風(おうか しゅんぷう に えむ)」という言葉は、唐代の詩人・崔護の有名な詩「人面桃花」にある「桃花笑春風(とうか しゅんぷう に えむ)」に由来する。
「人の世が変わっても、花は変わらず同じように咲いている」「どれほど困難な状況でも、必ず春は訪れる」——この句が持つ意味は、ユルエラの『Cherry Blossom, Don’t Cry』に深く響き合う。
この想いを借り、日本の春の象徴である「桜」へと置き換えることで、新たな表現「桜花笑春風」が生まれた。
スペシャルエディションでは、ユルエラが『Cherry Blossom, Don’t Cry』から選んだ8点の写真——カラー4点、モノクロ4点——が収められている。デジタル(アーカイバル)・ピグメントプリントで制作された写真は、光や空気、質感の奥行きを卓越したニュアンスで表現している。
また本作の大きな特徴として、日本の伝統的な掛け軸形式を採用している点である。柔らかなピンク色を基調に特別に仕立てられた掛け軸は、従来の形式とは異なり、鑑賞者自身がプリントを差し替えることができる仕様となっており、作品を見るという観賞行為を触覚的で参加型の体験へともたらす。
季節が移りゆくなか、静かに咲く桜は、暗闇のあとに小さな光のきらめきをもたらした。
『Cherry Blossom, Don’t Cry. 桜花笑春風』は、その瞬間から生まれた——作家の内なる風景が形を成した表現である。
それは観る者の時間の中に、柔らかく寄り添うエディションである。

Alba Yruela
Artist Profile
アルバ・ユルエラ(1989年生まれ、スペイン)は、エンポルダで育ち、自然への深い愛着を育んだ。身近な風景や人々を、親密で繊細でありながら、どこか率直な視点で写し取っている。彼女の制作はポートレート、静物、ファッション、映像など、多様なメディアに及ぶ。
これまでパリ、ロサンゼルス、ロンドン、バルセロナなど世界各地で作品を発表し、十数冊におよぶ写真集も刊行している。中でも代表作 Diaris 2009–2019 は、約10年にわたり撮影された500点以上の写真で構成され、内面世界をやわらかに映し出す美しく瞑想的な記録として高く評価されている。個人的な記憶と、形・色・光をめぐる探求とが織り重ねられた一冊である。
最新刊 Cherry Blossom, Don’t Cry(2025)では、日本滞在中に経験した心の変化を手がかりに、〈迷い〉から〈再生〉へと移りゆく感情の動きを、自然への変わらぬ眼差しを通して描き出す。満開の桜の下で、外界と内なる感性が響きあうように交わる、その繊細で詩的な瞬間が捉えられている。
Set of 8 prints -Digital pigment print-








Original Kakejiku






