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Interview : Yusuf Hassan from BlackMass Publishing


"...出版というツールについて考えるとき、私は本のやり取りだけを考えている訳ではありません。 それは一部であり、根幹です。私は疲れ果てるほどまでに思考回路を広げるのが好きなんです。 出版というのは、常に考えるべきことが沢山あります。"_Yusuf Hassan


 

Interview : Yusuf Hassan from BlackMass Publishing



_はじめに自己紹介とBlack Mass Publishingの紹介をお願いします。


Peace. 私はBlackMass Publishingの創設者であるユスフ・ハッサンです。BlackMass Publishingは、あらゆるカタチの研究に興味を持つ、継続的なプロジェクトです。 私たちだけでなく、興味を持ち、対話を共にすることで、参加したいと思っている人たちにとっても、学びの場になると思っています。


_出版を始めた理由と、BlackMass Publishingを立ち上げた理由とはどのようなものでしょうか?

出版は世界共通の表現です。ZINEはそれを伝えられる独特な方法です。 誰もがその体験に参加することができます。 ZINEはこのプロジェクトの核となるものであり、特に"誰でも作ることができる"という事実が重要です。


_あなたたちが行っているZINEを使って"対話に参加してくれる人たちとの交流”というのは、実際にどのようなことが行われていますか?

興味のある事柄について有意義な対話をすること、そしてより重要なことは、出版を通して、興味のある人たちが自分の考えや経験を共有できるようにすることです。


_実際の対話はどのような感じだったのでしょうか?よろしければ、印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

BlackMassは多くの大学に招待されています。招待されるたびに、さまざまなことがもたらされます。時には、ワークショップを開催したり、学生にレクチャーをしたりします。


MoMA PS1での参加では、スタディホールと呼ばれるインスタレーションを作り上げました。このインスタレーションは、私たちが4年間にわたって出版した出版物と一緒に、誰もが座って鑑賞できるスペースを提供することを目的にデザインされました。 また、このプロジェクトで特別だったのは、ショーの期間中も出版物を作り続けたことです。 つまり、新しいZINEを見るためには、また戻ってこなければならないのです。そうすることによって、作品は常にオープンで、魅力的なものへとなりました。また、このインスタレーションには、メールインプログラムも含まれています。これは、クワメ・ソレルが企画・構成したものです。 私はこのプログラムが大好きです。会期中、ゲストに封筒を配布し、指定された私書箱の住所に投函できるようにしました。 スタディホールでは様々なことが起こり、BlackMass Publishingにとってとても美しいハイライトとなりました。 対話はオープンでとても興味深いものですが、私はどちらかというと学生であることをご存じでしょうか。 私は常に学び、何が起こったのかを理解したいと思っています。 私が印象に残っているのは、出版物に関する有意義な会話がより頻繁に行われるようになったときです。出版というツールについて考えるとき、私は本のやり取りだけを考えている訳ではありません。 それは一部であり、根幹です。私は疲れ果てるほどまでに思考回路を広げるのが好きなんです。 出版というのは、常に考えるべきことが沢山あります。




_"私はどちらかというと学生である… "とおっしゃいましたが、対話を通じて学んでいくことで、また新たなZINEが生まれるということはあるのでしょうか。


そう、私は心の底から学生なんです。 学生のもとを訪れると、私はいつも、彼らの空間を共有させてもらったことに感謝します。 共有できることの尊さを感じています。 謙虚に、私は学生であり続けます。もう学ぶことがないと思った時点で、私たちは学んできた事との接触を絶つことがあります。私はこのことを心に留め、常に好奇心を持ち続けるように心がけています。


_ただ閲覧するだけでなく、このZINEを使いながら意見を述べたり、対話をしたりすること、ZINEへの参加が重要なプロセスになっているということですね。

ZINEは、出版物の中で私が一番好きなものです。 一度にいろいろなことができるのが魅力です。情報を素早く提供し、議論も可能にします。例えば、音楽を例にとってみます。音楽に関するZINEを作るとき、このテーマにはとても自由度が高いものです。なぜなら音楽は音だけにとどまらないからです。音楽とはフィーリングです。私は、音楽に関するさまざまな出版物を作ってきましたが、それはその奥深さに惹かれたからこそです。


_音楽に関するZINEのことをもう少し詳しく教えてください。あなたは"The poetics of music”のシリーズで、沢山の種類のZINEを制作されています。これらのZINEの中では、1冊のZINEのなかで別々のものを組み合わせることで、新たな表現が生まれているように感じます。例えば”Aretha Franklin”のZINEがそうです。アレサ・フランクリンのリリックとニッキ・ジョヴァンニの詩が1冊のZINEのなかで一緒に掲載されています。あなたが意図するものとは、2つを組み合わせることによって、私たち読者が新たな意見や考察をするということでしょうか?

音楽は、私が感情的、肉体的、精神的に優れた状態になれる数少ないものの一つです。 ここ数年、私が構成したZINEの多くは、音楽や音にまつわるものばかりでした。 アレサ・フランクリンの歌詞とニッキ・ジョヴァンニの詩の例で考えてみましょう。 もし、ニッキとアレサが一緒にレコードを作ったらと想像できますか?アレサが歌い、ニッキが詩を語る。 それはとても美しいことでしょう。現実には起こりませんでしたが、このようなZINEを通して起こりました。去年作ったZINEでも同じことをしました。"Mic Check: The Selected Poetry and Lyrics of Big L and Amiri Baraka(マイク・チェック :ビッグLとアミリ・バラカの詩とリリックの選集)" というタイトルで、ビッグLとアミリ・バラカのリリックと詩を掲載したものでした。 これは、私が架空のオープンマイク・ナイトを企画したものです。 ZINEを通じて彼らのことを紹介するのは意義深いことだったと思います。


_アレサ・フランクリンやアミリ・バラカ や ビッグLはすでに亡くなってしまった故人のアーティストです。彼らを現代で引き合わせることは、ZINEの中だからこそ不可能を可能にできるのだと思います。だからこそ、これらのZINEの巻末に”Lives!”と表記しているのでしょうか?そして、私たち読者はそのLivesを体感し、そして語り合い、その空間を共有することができます。それがあなたにとっても、とても重要で意味のあることだということでしょうか?


そうです、このように彼らを引き合わせることは、私にとってとても重要なことなのです。 特に、時間的に大きな隔たりがあるアーティストたちは…。 例えば、ロバート・ジョンソンがマイルス・デイヴィスに会うことは不可能だったはずです。 ロバートは1938年に亡くなり、マイルス・デイヴィスは1926年生まれです。このような形で二人を引き合わせることができるのは、とても美しいことです。 そして、そうです......だから私は各ZINEの最後に「Lives!」と書いているんです。 この言葉は、チャーリー・パーカーが亡くなった後、テッド・ジョーンズがチャーリー・パーカーに捧げた言葉で、テッド・ジョーンズは「BIRD LIVES」と書きました! チャーリー・パーカーのニックネームがバードであることから、チャーリー・パーカーへの敬意を表しています。 私は、ジャズのゴッドファーザーへの感謝の気持ちを表す賢い方法だと思いましたので、テッドの碑文を拝借し、今では私にインスピレーションを与えてくれた人たちへのトリビュートZINEの多くを同じ言葉で締めくくっています。 それは、彼らの芸術人生が移り変わったとしても、彼らが残したインパクトは生き続け、決して死なない、生き続ける(LIVES!)ということを意味しています!


_あなたが使う”Lives”という言葉はテッド・ジョーンズと チャーリー・パーカーへのリスペクトからくるオマージュだったんですね!!

そして、ここまであなたへインタビューしていて思ったことがあります。あなたの作品、そしてあなたから出てくる言葉、そこに関わる全てのアーティストが黒人文化で活躍している人たちです。あなたの言葉には黒人文化への敬意を感じます。あなたのその敬意はどこからこみ上げてくるものなのでしょうか?(もし、お気を悪くさせていたらすみません.この質問は、私のような海に囲まれた日本で生まれ育った人間には、なかなか生まれない感情のような気がします。私たち日本人の中でも黒人文化に敬意を持っている人は沢山います。ただ、どうしてもその根底にあるものが、あなた達の敬意とは何か違うようにも感じています。)


私の尊敬の念は、私より前に存在したもの、そして私のために本当に強い土台を築いた人たちから来るものです。 (あなたは私を不快にさせていません......私は、あなたが伝えようとしていることを理解しています。) BlackMassの活動は、黒人のためだけでなく、すべての人に開かれ、共有される普遍的な表現なのです。 これは学習的な表現の一形態であり、私たちは皆、何かを学ぶことができます、そう願っています。 当時のジャズミュージシャンや詩人の多くは、海外で多くの時間を過ごしていました。テッド・ジョーンズは、ヨーロッパ、特にフランスで多くの時間を過ごしました。だから、BlackMassがアフリカ、アジア、ヨーロッパ、南米に広がっていくのを見ると、この運動に貢献した黒人ジャズミュージシャン、詩人、画家たちのことを考えさせられます。黒人はたしかに存在しています。



_なるほど!あなたの言葉どおり、今まさにニューヨークから、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、南米へとBlackMass Publishingの活動はどんどん広がっています。あなたは今後どのような展開をしていきたいですか?


拡大し続け、意義のある作品を作り続けること。そしてもっと重要なことは、他者とスペースを共有することです。それができることに、本当に健全でやりがいを感じています。


_ありがとうございます。あなたへの最後の質問です。BlackMass PublishingのZINEを手にした方、このインタビューを読まれた方に、伝えたいことや共有したいことはありますか?何か読者へメッセージがあればお願いします。

いつもBlackMass Publishingを応援してくださりありがとうございます。私たちは感謝しています。もし、私が読者の皆さんに何か残せることがあるとすれば、それは"何事も当たり前だと思わないこと"です。そして、これはまず私自身へのリマインダーでもあります。PEACE!



 

BlackMass Publishing

2019年に設立されたBlackMass Publishingは、ニューヨークを拠点とするコレクティブであり、黒人アーティストによる作品をプロモーションし、ZINEなどの"出版活動"をすることで"表現"を行っているインディペンデントプレスです。BlackMass Publishingは、視覚言語を通してコミュニティを育みながら会話を促進することに興味・関心を持っており、画像やテキストでの表現を通じて、ブラックネス、その効果、影響に焦点を当てています。


BlackMass Publishingの出版物は、ショーンバーグ黒人文化研究センター(ニューヨーク)、RAW Material Company(ダカール)、Center For Book Arts(ニューヨークのアート・ミュージアム)、トーマス J. ワトソン図書館、ニューヨーク公共図書館、ニューヨークラングストンヒューズ図書館、ザ・エバーグリーン州立大学などの永久ブックコレクションに収蔵されています。


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