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Interview:Sally J. Han

  • 15 時間前
  • 読了時間: 8分
Last Night's Dream
Last Night's Dream

_この度はインタビューにお時間をいただきありがとうございます。まずはじめに、ご自身の生い立ちや背景も含めて、自己紹介をお願いできますでしょうか。


こんにちは、Sally J. Han(サリー・J・ハン)です。画家として活動しています。中国に住む朝鮮族の家庭に生まれ、幼少期は中国と韓国を行き来して過ごしました。高校生のときにアメリカへ移住し、それ以来、ニューヨークで生活し制作を続けています。


_あなたはアジアにルーツを持ち、現在はニューヨークを拠点に活動されていますが、こうした場所の移動は、ご自身の視点や制作にどのような影響を与えてきましたか?


子どもの頃は、歴史や政治についてあまり理解していなかったので、自分や家族が朝鮮族であることの意味を深く考えることはありませんでした。でも成長するにつれて、自分は中国人なのか、それとも韓国人なのかと問い直すようになり、どちらかのアイデンティティを選んだほうが社会の中で生きやすくなるのではないか、と感じるようになりました。


その後アメリカに移り、再びアジア系移民としての生活を経験することになります。さまざまな文化的背景を持つ人々や他の移民コミュニティと出会う中で、少しずつ視野が広がっていきました。そして、多文化的な背景を持つことは弱さではなく、むしろ強みであると理解するようになりました。


これらの経験がどれほど直接的に作品へ影響しているのかは断言できませんが、かつて自分の欠点だと思っていたものを受け入れるほどに、絵の中に自信のようなものが現れてきているように感じます。


First Snow in the East Village
First Snow in the East Village

_絵を描きはじめたのはいつ頃でしょうか?また、そのきっかけはどのようなものだったのでしょうか?


正確にいつから描き始めたのかは覚えていませんが、私はずっと絵を描いている人だったと思います。母は、私が4歳か5歳のときに描いた母の肖像画を今も大切に持っているので、その頃にはすでに描いていたのだと思います。落書きをしたり、場面を想像したり、漫画を描いたり——描きたいと思ったものは何でも描いていました。


言葉よりもイメージを通してコミュニケーションをとるほうが、ずっと自然に感じていました。韓国語、中国語、英語の順に言語を学んだので、学校でうまく話せなかったり、新しい友人を作るのが難しいときには、よく絵を使って最初のぎこちなさを和らげていました。そうして、絵は自然と私自身のひとつの言語のようになっていきました。


_絵を描くことを今日まで続けてこられた原動力は何でしょうか?また、それに関わる印象的な体験や瞬間があれば教えてください。


正直に言うと、アート以外に特別得意なことがあるとは思っていなくて、ただ制作のプロセスそのものが好きなんだと思います。もっと広く言えば、手を使って何かをつくることに惹かれています。


制作の過程には常に困難が伴いますが、ときには最もつらく感じた部分が、あとから振り返ると一番良い部分になっていることもあります。そうした瞬間を乗り越えることで得られる達成感や、自分自身を見つめ直す機会が、私にとってとても大切なものになっています。それが、制作を続けている理由だと思います。


日常生活では「イエス」か「ノー」かを選ばなければならない場面が多いですが、制作の世界には決まった答えがありません。その自由さを、とても大切に感じています。


_あなたの制作に影響を与えたアーティストや作家、あるいはその他の存在があれば教えてください。


ニューヨークの大学に通っていた頃、勅使河原宏の『他人の顔』に強く惹かれたことがきっかけで、安部公房の原作小説や『砂の女』を読みました。その後も彼の映画は何度も見返していて、今でも大好きな作品です。


また、大江健三郎の『万延元年のフットボール』や三島由紀夫の『金閣寺』も愛読しています。最近ではミン・ジン・リーの『パチンコ』に深く心を動かされ、今は劉慈欣の『三体Ⅲ 死神永生』を読んでいます。振り返ると、アジアの作家に惹かれることが多いようです。


文学作品を読んでいると、その表現をどのように視覚的な言語に翻訳できるだろうかと考えることがあります。気に入った文章をスケッチブックに書き留めることもあります。


視覚芸術では、ドメニコ・ニョーリ、アンリ・ルソー、ヘレン・フランケンサーラー、ジョセフ・ステラ、リー・ボンテクー、アンドリュー・ワイエスなどが好きです。挙げればきりがありませんが、ジャンルに関係なく、さまざまな視覚言語に惹かれています。


_現在のあなたの制作において、主な源や衝動となっているものは何でしょうか?


作品をつくらないでいると、自分の声を失ってしまうように感じます。だから、描き続けています。


Painting and Waiting
Painting and Waiting

_あなたの作品にはとても親密で個人的な感覚が感じられます。一方で、過去のインタビューで、作品に登場する人物は必ずしもご自身ではないと語られていました。

こうした「個人的でありながら個人に還元されない人物像」について、あなた自身はどのように捉えていますか?


その人物が自分のように感じられることもあれば、そうでないこともあります。最初から特定の人物やポーズを決めて描き始めることはありません。たとえば風景から始めて、そこに誰かがいるべきだと感じたときに人物を加えることがあります。スタジオでは自分自身を参照しやすいため、モデルとして自分を使うことも多いです。


ただ、完成した絵の中の人物を見ると、どこか距離を感じることがあります。自分に似ているようでいて、完全には自分ではない。そう感じることがよくあります。また、描いた人物がしっくりこないと感じて、後から取り除くこともあります。


異なる文化的背景を持つ鑑賞者が、アジア人女性としての姿を見たとしても、そこから何かしら普遍的なつながりを見出してもらえたら嬉しいです。


_作品に登場する人物について、特定のキャラクターとして設定されているのでしょうか?それとも、より象徴的な存在として描かれているのでしょうか?


いいえ、特定の人物を描こうとしているのであれば、タイトルにその名前を入れていると思います。先ほどもお話ししたように、「ここに人物がいたらいいかもしれない」といったシンプルな感覚から制作が始まることが多いです。ですので、明確なキャラクターというよりは、より普遍的な存在として受け取ってもらえたらと思っています。


_作品を描き始める際、最初から明確なイメージを持って取り組まれるのでしょうか?というのも、あなたの作品には、フォーチュンクッキーや青島ビール、安部公房の小説など、とても印象的でユニークなモチーフが登場します。これらは意図的に最初から構想されているのでしょうか?


最初から細かく計画することはありません。あまりに計画しすぎると、自分の作品ではなく誰かの課題をこなしているように感じてしまい、すぐに興味を失ってしまうからです。スケッチをするときも、納得のいく構図が見つかるまで素早く描き続けます。


大きな作品の場合、小さな紙で色を試すこともありますが、最終的な仕上がりは最初のイメージとはほとんど違うものになります。ある意味で、絵を描くことは明日何が起こるかわからない感覚に似ていて、その流れに身を任せています。


Bird, Flowers and Cat
Bird, Flowers and Cat
Late Summer
Late Summer

_あなたにとって「美しい」とはどのようなものを意味しますか?


とても難しい質問ですが、今の自分にとっては、「自然に感じられるもの」が美しいのだと思います。


_日常の中で、個人的に美しいと感じるものや瞬間、イメージがあれば教えてください。


正直なところ、何かを感じるとき、それは「美しさ」というよりも「楽しさ」に近い感覚です。自分が美しいものを描いているとは、あまり思っていないかもしれません。


_最後に、あなたの作品に初めて触れる方へ、何かメッセージがあればお聞かせください。


私の作品には決まった答えはありません。なので、自由に、それぞれのやり方で感じて楽しんでもらえたら嬉しいです。


Studio portrait by Balarama Heller
Studio portrait by Balarama Heller

Sally J. Han

サリー・J・ハン(1993年、中国・瀋陽生まれ)は、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト。2016年にニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツでBFAを取得し、2019年にニューヨーク・アカデミー・オブ・アートでMFAを取得。

これまでに複数の個展が開催されており、主なものに「Nine Lives」(ギャラリー・ベレニウス、ストックホルム、2023年)、「Lost and Found」(フォートナイト・インスティテュート、ニューヨーク、2022年)、「Independent Art Fair」でのソロ・プレゼンテーション(ニューヨーク、2021年)、「Foreplay」(フォートナイト・インスティテュート、ニューヨーク、2020年)などがある。

また、多数のグループ展にも参加しており、主なものに、アリソン・ジンゲラスのキュレーションによる「Pictures Girls Make: Portraitures」(Blum & Poe、ロサンゼルス、2023年)、「Thinking of You」(FLAG Art Foundation、ニューヨーク、2023年)、「Pictus Porrectus: Reconsidering the Full Length Portrait」(アリソン・M・ジンゲラスおよびドディ・カザンジアンによるキュレーション、Art & Newport Foundation、ニューポート、2022年)、「Dark Light, Realism in the Age of Post truth」(マッシミリアーノ・ジオーニのキュレーション、アイシュティ・ファウンデーション、ベイルート、2022年)、「The Power to Dream」(ユスノー・ギャラリー、パリ、2022年)、「Wonder Women」(ジェフリー・ダイチ・ギャラリー、ロサンゼルスおよびニューヨーク、2022年)などがある。

作品は、レバノンのアイシュティ・ファウンデーションおよびマイアミ現代美術館(Institute of Contemporary Art, Miami)のコレクションに収蔵されている。


Sally J. Han / Lost and Found
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