「写真というものは、外の世界を理解し、人を知るための手段だと私は思っています。写真の持つエネルギーは、私がカメラのシャッターを切った瞬間に、互いに絡み合うように発生します。お互いに相手からエネルギーをもらう、それは素晴らしい衝突でした。私の被写体は皆、美しく、勇敢で、正直で、リアルで、私に多くのインスピレーションを与えてくれます。」__Luo Yang
Interview :Luo Yang
ーはじめに、写真をはじめた経緯と、「Girls」プロジェクトをスタートしたきっかけを教えてください。
私は大学でグラフィックデザインを学び、写真は自分の好きなこと、趣味としてスタートしました。はじめは身の周りのもの、友人、クラスメイト...などを撮っていたのですが、そこから自然と発展して、女性を撮ることで自分自身の感情を表現する手段を見つけました。
ーGirlsでは、あなたは実に多くの被写体を撮影されていますね。彼女たちとはどういう経緯で知り合ったのですか?
スタートした当初は私の友人やクラスメイトがほとんどでした。私は美大に通っていたので、そこにはクールで特別な女の子がたくさんいました。その後はインターネットや、友達の友達からも来てくれるようになりました。
ーあなた自身が被写体から影響を受けることや、被写体からエネルギーを貰うことはありますか?そして被写体が違っても、そこに共通するものはありますか?
写真というものは、外の世界を理解し、人を知るための手段だと私は思っています。写真の持つエネルギーは、私がカメラのシャッターを切った瞬間に、互いに絡み合うように発生します。お互いに相手からエネルギーをもらう、それは素晴らしい衝突でした。私の被写体は皆、美しく、勇敢で、正直で、リアルで、私に多くのインスピレーションを与えてくれます。
ーあなたの写真に対して、鑑賞者や批評家の方などからは「生々しさ」「親密な」という言葉が良く使われています。それは、あなたと被写体との距離感からくるものだと思います。被写体と接するときに大切にしていることなどありましたら教えて下さい。また、被写体との距離にまつわるエピソードなどもあったら教えてほしいです。
正直さ、リアルさを表現をすること、感情を完全に解放することはとても大切なことだと私は思っています。被写体が自分のことをさらけ出してくれたり、物語を語ってくれたりしたとき、それはとても感動する瞬間が多く、その瞬間は私にとっても、とても貴重なものだと思っています。
ー「Girls」のプロジェクトでは10年、そして「Youth」プロジェクト。この長い期間のなかで、社会や環境は急速に変化したと思います。そのなかで被写体にも変化したことはありますか?また、変わらないところもありますか?
女の子の撮影から、そして男の子やLGBTQの撮影まで、社会が発展するにつれて、世界や人々の生活が多様化していることを実感しています。人々はより自分らしく、自己表現ができる時代になったのだと思います。それでも被写体の変わらない部分は、やはり正直さ、リアルさの部分かもしれません。
ー「Girls」のプロジェクトに関して、過去のインタビューで「(あなた)ご自身のアイデンティティの探求をモデルに投影している」とあなたはおっしゃっていました。よろしければ「Youth」プロジェクトで被写体と向き合う際のあなたの感情や気持ちを聞かせてください。
「Youth」を撮影するとき、私は外側の人間として、より合理的かつ客観的な視点から彼らを観察しています。写真を通して若い世代の内面やライフスタイルを理解することは、魅力的な探求であり、非常に興味深いプロセスでした。
ー都市の景観や被写体を取り巻く環境、あなたの写真を見ていると、とても文化的な側面を見ることがあります。その一方で、あなたが過去のインタビューで、自然に触れることの大切さを話されていました。「自然」と「文化」この2つの言葉はある意味で対局的な意味を持っている部分があります。あなたは「自然」と「文化」についてそれぞれどのようなお考えをお持ちですか?
私の作品では、自然と文化がひとつになって作品に表現されることを望んでいます。自然は私たちにとってとても貴重なものだと思います。都市化により人々が増え、私たちの原点にある多くのものがいま失われていっています。私たちは自然の一部であり、自然の中でこそ、自分自身や世界の本質・真実を見出すことができるのではないかと思います。
ーあなたの写真を見ていると「自由」というキーワードが浮かびます。それは、自由を渇望しているものであったり、もしくは自由を自己表現しているものであったりと様々です。そこで、今一度あなたにお聞きしたいのですが、あなたは「自由」という言葉から何を連想されますか?また、「自由」についてどのようなお考えをお持ちですか?
私は「自由」という言葉から、生命の本質、純粋で無垢なもの、そして世界の本質を結びつけて考えています。自由とは、原点に戻ること、つまり、世界から影響されない、リアルでピュアな状態に戻ることだと思います。
ー最後の質問です。あなたの写真を見る人に一番伝えたいことは何ですか?
私の作品を通して、人々が勇気と良いエネルギーを得て、本来の自分でいられることを願っています。
Luo Yang(ロ・ヤン 1984年生まれ)は、中国遼寧省に生まれ育つ。2009年に瀋陽の名門美術学校である魯迅美術学院を卒業。グラフィックデザイナーとして教育を受けるが、写真への興味と才能を追求することを決意。現在、北京と上海を拠点に、フリーランスの写真家として活動している。彼女の作品では、高い演出性のあるポートレートや 入念に構成されたポーズが、生々しくも不鮮明なスナップショット的な美学と交わります 。アジアや海外で数多くの展覧会を開催した後、ロは国際的に高く評価され、ARTE、ZDF Aspekte、Spiegel Online、Le Figaro Internationalなどの主要メディアで紹介された。2018年、彼女の連載10周年を機にモノグラフ『GIRLS』が出版されました。同年、BBCが選ぶ「世界で最もインスパイアされる女性100人」に選出された。近年では、Jimei x Arles Women Photographer's Awardを受賞。現在は中国とパリを拠点に活動。
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